【長期の検尿異常は放置して良い?】常染色体優性Alport症候群という概念

症例紹介
べっち
べっち

うーん...

きつね先生
きつね先生

また何かに困っているみたいだね?

べっち
べっち

そうなんです! 長く検尿異常のあった方に腎生検を行ったのですが,菲薄基底膜病の診断になりました.先輩に聞いてみると,良性疾患で予後はいいし,フォローだけしとけばいいよとのことでしたが,尿蛋白も出ているし,本当に予後はいいんでしょうか?治療は不要なんですかね?

きつね先生
きつね先生

そういう疑問はとても大切だよ.実は常染色体優性Alport症候群という概念もあるよ.今回まとめてみよう.

63歳女性

主訴 検尿異常,腎機能障害

現病歴 中学生頃から検尿異常(尿潜血)が持続的に陽性であり,X-14年頃より尿蛋白も持続的に陽性であったが,これまで精査は行ってこなかった.X-1年頃よりCre 1.15 mg/dLと軽度高値を認め,慢性腎臓病の原因検索を目的としてX年5月にかかりつけ医より当科に紹介となった.持続する検尿異常の鑑別を目的として,X年5月27日に腎生検を実施した.

WBC                 ( − )
PH                  6.0
OB                  (2+)
PRO                 (2+)
GLU                 ( − )
比重                1.004
沈渣赤血球5-9/HPF
沈渣白血球1>/HPF
UTP/Cre3.4g/gCre

尿検査異常が十数年にわたって持続しており,最近は蛋白尿も認められているようです.家族歴を確認すると,両親〜子にかけて,尿潜血,尿蛋白の病歴が認められました.濃厚な家族歴があるようです.

腎生検結果

光顕微鏡所見:糸球体は全て正常であった.

蛍光所見:免疫グロブリン,補体の沈着は認められなかった.

電子顕微鏡所見:びまん性の基底膜の菲薄化(180nm程度)を認めた.

基底膜の菲薄化を認めたことから,「菲薄基底膜病」と診断された.

では基底膜はなぜ菲薄化するのでしょうか?

糸球体基底膜はα3,α4,α5がよりあい,正常な4型コラーゲンを形作っています.(https://genetics.qlife.jp/diseases/alportより引用させていただきました)
それぞれをコードするのがCOL4A3,COL4A4, COL4A5です.
このうちのどれかがかければ,正常な4型コラーゲンが産生できなくなり,基底膜が菲薄化します..

COL4A5は性染色体上に存在し,この遺伝子の異常が,一般的な「Alport症候群」に該当します.
腎予後は非常に悪いことが知られています.

べっち
べっち

COL4A3とCOL4A4に異常が出るとどうなるのでしょうか?

きつね先生
きつね先生

COL4A3とCOL4A4は常染色体上に存在するよ.これがいわゆる「常染色体優性Alport症候群」に該当するよ.

COL4A3とCOL4A4は常染色体上に存在するため,その異常による症状は比較的軽度になります.一般的に菲薄基底膜病に該当する病理所見には,「常染色体優性Alport症候群」が多く存在すると考えられます.

今回の症例でも遺伝子解析を行ったところ,COL4A3に病的なバリアントを認め,常染色体優性Alport症候群と診断されました.

診断:常染色体優性Alport症候群

べっち
べっち

遺伝子検査まで頑張りました!ところでこの病気はすごく珍しいのでしょうか?

•臨床的にAlport症候群が疑われる400家系のうち,伴性劣性遺伝が74%,常染色体顕性遺伝が17%と報告されています..(Yamamura T et al; Mol Genet Genomic Med 7: e883, 2019)

•COL4A3,COL4A4のバリアントの保有率は0.94%と比較的多いと報告されています.( Gibson J et al; J Am Soc Nephrol 32: 2273-2290, 2021)

きつね先生
きつね先生

おそらく見逃されているだけで,コモンな病気であるということが予想されるね

べっち
べっち

ところで最初の疑問なのですが,実際予後はどうなのでしょうか?

予後良好であると考えられてきましたが,長期的な経過で高血圧や蛋白尿,腎機能障害をきたす症例が報告されています.(Voskarides K et al; J Am Soc Nephrol 18: 3004-3016, 2007.Savige J et al; Kidney Int 64: 1169-1178, 2003)
プロフェッショナル腎臓病学にも,60-70代で末期腎不全に至ると記載されています.

Alport症候群はACE阻害薬・ARBにて腎機能障害の進行抑制が可能であると報告されています.(Gross O et al; Kidney Int. 81: 494-501, 2012)

きつね先生
きつね先生

つまり,菲薄基底膜病の中には常染色体優性Alport症候群が存在し,予後がいいというわけではないので,腎保護薬はしっかり使用してフォローしていくのが良さそうだね.

べっち
べっち

わかりました!

Takehome message

・菲薄基底膜病の中には常染色体優性Alport症候群が含まれる.
・予後は良好というわけではないので,腎保護薬は導入して,フォローアップするのが良さそう.

コメント

タイトルとURLをコピーしました